Last Updated on 2024年5月14日 by らくろぐ
帯にある”かつてなく最高の主人公、現る!」が偽りないことを証明してくれた、最高の主人公「成瀬あかり」を」中心に周りの人々が織りなす物語、宮島未奈さん著「成瀬は天下を取りにいく」について紹介します。
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「成瀬は天下を取りにいく」簡単なあらすじ
成瀬あかりは滋賀の中学2年生。これだと思ったことはとことん突き詰めそしてすぐにモノにしてしまう。成績もスポーツもけん玉もシャボン玉さえもすぐに極めてしまうので、クラスメイトからはちょっと(かなり?)変わってると思われているが全く気にしない。幼なじみの島崎みゆきはそんな成瀬が気になるが程よい距離感を保っている。
そんなある年の夏、地元滋賀県大津市にある西武百貨店が閉店するという。それを知った成瀬は西武閉店の日まで自分の時間をささげるというのだ。
成瀬は何のためにそんなことをするのか?成り行きで一緒に過ごすことになった島崎目線で成瀬の日常を描く「ありがとう西武大津店」。
そのほか、成瀬に関わることになる、同級生や部活動での出会い、同郷の人々等、個性豊かな人物が登場します。
様々な人からみた「成瀬あかり」という人物を描くことを通して、その人たちの心情の変化、成長する姿を6つの異なる短編小説の中で読むことができます。
「成瀬は天下を取りにいく」の本の構成
この本は6つの物語から構成されています。
各々が一つの短編小説となっているのでこれだけを読んでも十分読みごたえがありました。でも読み進んでいくうちに各々の登場人物と、主人公「成瀬あかり」との関係性が見えてきて、それぞれの短編小説がその順番で構成されている事の意味を感じることができました。
「成瀬は天下を取りにいく」を読んでの感想
久々に純粋に人に薦めたくなる小説に出会いました。私自身、本の情報は「王様のブランチ」で入手することがほとんどなのですが、今回もこの本の紹介みて、すぐに読みたくなりました。
キャッチーなタイトルと、目を引くビビットなブックカバー。2024年本屋大賞ノミネートというのも惹かれさっそく表紙をめくっていきました。
成瀬あかりは、もし彼女が自分の近くにいたら、おそらく憧れと嫉妬が混じった感情を持ってしまうかもしれない。それくらい何でもすぐできてしまう人でした。
そんなパーフェクトなクラスメイトがいたら浮いてしまうでしょう。現代の残酷な子供たちの世界では、無視や仲間外れのようなことが起きるかもしれない。もしそんな状況にいたら、自分は彼女と関わらないようにするかもしれない。
幼馴染だった島崎みゆきもそんな気持ちを持ってました。ただ、中2でクラスがわかれたこと、同じマンションに住んでいる事もあり、程よい距離感を保ちつつ一緒に通学してました。
成瀬が西武大津店に捧げると決めたときも、漫才やるといったときも、島崎は成り行きで付き合いながら最後は夢中になって成瀬と一緒に駆け抜ける。やがて別々の進路を進むことになるのだが、お互いが大切な存在になっていく。
私自身、中学高校時代にとても大切な友人と出会うことができました。ただ、部活も勉強も学校行事も中途半端で、友人たちと一緒に何かを成し遂げたという記憶はあまりありません。これは絶対、「この子」たちとやりたいんだ、そういう経験をした島崎が羨ましく感じました。
この本は、「成瀬あかり」というある意味孤高の達人を周りから見る人たちの物語で進んできます。成瀬あかりは周囲の目を気にせず自分の進んだ道を行くだけの人だと思っていました。
ところが、最後のエピソードは「成瀬あかり」自身の視点から語られるものでした。彼女も一人の人間で、とても周りの人たちへの思いにあふれたキャラクターでした。周囲の人たちが感じていた彼女の人間性をいい意味で裏切ってくれたのです。
読み終わってからますます「成瀬あかり」という人物のとりこです!になりました。
「成瀬あかり」の魅力に取りつかれたところで、もう一度読み直してみると他のキャラクターたちの違った一面も見えてくるように感じました。
愛すべきキャラクターがたくさん出てくる「成瀬は天下を取りにいく」是非お読みください。
「成瀬は天下を取りにいく」という本をおススメしたい人
中学生~高校生には是非読んでほしいです。中学生時代と、高校時代それぞれが描かれているので、思春期の子育てに悩む持つお父さん、お母さんにも読んでいただければ気づきがあるのではないでしょうか。
私自身も、この世代の子供たちが考えていることが少しクリアになったような気がして、子供への接し方を見直してみようかと思ったところです。
宮島未奈さんのあわせて読みたい本
続編にあたる「成瀬は信じた道をいく」が2024年1月に刊行されました。ますますパワーアップした唯一無二の「成瀬あかり」と彼女にまつわる様々な登場人物がストーリーを繰り広げられるようです。まだ読めていないのですが、こちらも入手したらレビューで紹介したいと思います。